「失礼しま~す…」
中には保険医一人しかいなかった。
「ん?…どうしたの!?」
振り向いた保険医はびしょびしょの私を見てぎょっとした。
「あ、ちょっと……いろいろあって…」
先生に「ほら」とタオルを渡され髪を拭きながら応えた。
「それって僕達のこと?」
「え?」
「ごめんね、僕も否定したんだけど…もう学校中知ってるよ」
複雑そうな顔。
教師としては生徒と噂されて大変なんだろう。
「すいません……、こんなことになってしまって…」
「いやいや、僕にも責任はあるから」
知らず知らずのうちに涙が出ていた。
「萌ちゃん!?」
「…わ…たし…、みんなに誤解されて…、彼氏にも見放されちゃうし……別れちゃうかもしれない…もう、どうしたらいいのかわかんなくて…」
「よしよし」
先生に抱き締められ、先生の胸の中で気の済むまで泣き続けた。
「……落ち着いた?」
「はい…、すいません…」
「いいよ、いいよ。気にしないで」
「もう今日は帰りなさい」と言われて保健室を出た。
その光景を誰かが見ていたなんて知るよしもなかった。


