「べ、別に用とかはないんですけど…」
「けど?」
「……道に迷ったっていうか…」
「なるほど」
男の人はしきりに頷きながらカウンター前の席を引いて「どうぞ」と言った。
「あ、ありがとうございます…」
「なにかお飲みになりますか?」
「あ、いえ、結構です」
…ちょっと失礼だったかな?と思ったけど、当の本人は気にもしていないようで相変わらずにこにこしながらグラスを拭いていた。
「さて、ではまず自己紹介をしましょうか」
「自己紹介…?」
「ええ、私の名は『デスイーター』と申します。つまり、『死喰い人』という意味です。どうぞお見知り置きを」
「デスイーター……死喰い人」
「あなたのことは承知しておりますのでご安心を」
「……えっ!?」
なにを承知しているのか知りたかったけど、怖かったので聞くのを遠慮しといた。
「……なにか、お悩み事があるのですね?」
「…え?」
「いえ、あまりにも思い詰めたお顔をなさっていたものでしたので…ご無礼をお許し下さい」
「わかります?」
「ええ、ここに来るお客様は大体お悩み事などがある方なので」
「そう……なんですか…」
「お話で良ければお聞きしますよ」
私は何だか不思議な気分になり、『この人になら話してもいいかもしれない』という気持ちになった。
「……実は……」
私は全てを話した。


