暗い路地裏。
街灯もなく、人っ子一人いない。
完全に道に迷った…。
さっきまで晴れだった空も今ではどんよりと雨雲が一面覆っていた。
その先には一本の道。
……行くしかないよね…。
カツンカツンカツン
一歩進む度に響く私の足音。
…不気味。
………ん?なにあれ。
路地を行った先にあるのは小さな小洒落たカフェみたいな店。
店の奥は行き止まりになっていて、綺麗にぽっかりと店が隙間にはまっているようだった。
……入って見ようか…。
ギィィ
チャリンチャリン
中はまさしくカフェと言ってもいいくらいの内装。
しかし、客は一人もいなかった。
客どころか従業員らしき人も見かけない。
「……あのぅ~」
シーン
「誰かいませんかぁ~?」
応答なし。
今日は休みなのかな?と思って帰ろうと踵を返すと、直ぐ後ろに男の人がにこにこしながら立っていた。
「……っ?!」
「いらっしゃいませ」
恭しく一礼する。
私はそのことよりも、気配がなかったのにいつのまにか後ろにいたことにびっくりして返事を返すどころではなかった。
顔を上げた男の人は完璧な笑顔のままで。
「今日はどのようなご用件で」
と言った。


