上条はその表情と声音に驚き、
弾かれたように顔を上げた。


「七瀬！」


声をかけようとしたのと同時だった。

部屋の扉をノックする音が聞こえた。


「はい」


返事をすると小さく扉が開き、
同じフロアの桝田があらわれた。


「失礼します。
上条さん、もう七瀬さん大丈夫ですか？
部長がちょっと七瀬さんと向こうで話したいって」


「ありがとうございます」


透子は苦い顔をして立ち上がった。


「それじゃあ上条さん、すみません、
呼ばれてるみたいなので」


上条ははっとして頷いた。


「あぁ、後で俺も事情を説明しに行くから」


「はい、お願いします。
失礼します」


透子が出て行って静まり帰った部屋で、
上条はじっと考えこんでいた。



……似ている。



昨日の夜に天音に言われた言葉と、
あまりに酷似していた。


これも偶然か？



しかし上条は、何か非常に大事なことを忘れているような、
もどかしい違和感に支配されていくのを感じた。



本当にただの偶然だろうか。



今まで他の人間を見て、
天音さんに似ていると思ったことがあったか？



それから、一度同じようなことを考えた時があったのを
思い出した。



いつだったか。