終電を逃して。

私は、沿線沿いをとぼとぼと歩いていた。

見知らぬ街。

彼は来ない。

どうしてこんなに、切ないんだろう。

悲しいんだろう―――


春次郎さんとちゃんと会ったのは、これがたった二回目。

円花さんみたいに、ずっと一緒にいられるわけじゃない。

仲直りも、簡単にできる距離じゃない。


私は、つくづく自分が馬鹿だと思う。

そもそも、ネット上にアップされていた動画を見て、その人を好きになるなんて。

そんな恋、上手くいくわけないんだ。

遠距離恋愛は、お互いに好き同士のカップルが、離れ離れになって初めて成立する。

最初から遠かった私たちなんて、近くなろうにもなれなくて。


もし、春次郎さんが寝込んでいても。

看病しにいってあげられない、それが私。

私と春次郎さんだ。



「ばか。」



星空に向かってつぶやいた。

ああもう、ほんとにばか。

円花さん帰ったんだし、図々しくいればよかった。

せっかく一か月間バイトしたのに。

せっかく、せっかく……。

春次郎さんに、会えたのに。


空を見ていたら、涙がこぼれた。

涙で、星々がぐにゃりと歪む。

こんなに綺麗な星空も、春次郎さんがいないと霞んで見える。

君が教えてくれたフォーマルハウトも、秋の四辺形も、うお座も―――

見つけることはできない。


もう、終わりだって、そう思うのに。

彼は私にとって、余りにも明るすぎたから。

その光を、忘れることができない私が、ここにいた。