悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~

あたしは働いたことはないけど、こんなふうにだらけちゃっていていいんだろうか。


「ねぇ、仕事しなくていいの?」


たまらず聞いてみると、柳は足を組み、カウンターに肘を掛けて言う。


「今暇なんだよ。何もすることがない時は、お客さんとコミュニケーションとってろっていうのがマスターの意向だから」

「へぇ……。や、それにしてもだらけ過ぎじゃ……」

「“スロース”って、日本語で何のことだか知ってるか?」


突然質問されて首を横に振るあたし達に、柳はレジの横にいる、爪が長い小さな動物の置物を指差す。


「“ナマケモノ”だよ。マスターだって今タバコ休憩中だし、こういうのーんびりしたのがこの店の特色なわけ。
お客さんもそれを好んで来る人ばっかりだから、俺らが何してても特に気にしねーの」


そうなんだ……そう言われると、昔のまま時間が止まっているようなこのお店の雰囲気にも納得。

なんかいいなぁ、気楽な感じが。


「柳にぴったりの場所じゃん」

「だろ? 俺もここ気に入ってるから、多少時給安くてもやめらんねーの」


そう言って、脱力系な彼はへらりと笑った。