悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~

慰めるって……と、考える余裕はなかった。

腕の中で秋ちゃんを見上げた瞬間、その綺麗な顔が、くっつきそうなほど近くに寄せられてきたから。


──キスされる……!?

そう直感して、あたしはギュッと目を閉じて顔を背けた。


「っ、やだ……っ!」


腕にありったけの力を込めて身体を離す。

恐る恐る見上げると、秋ちゃんは少し切なげにも見える笑みを浮かべていた。


「そんなに柳くんのことが好き?」


コクリと頷くと、「そうか……ちょっと悔しいな」と言って苦笑する。

あたしには、彼がどうしてこんな言動をするのかわからない。


「何で……? 秋ちゃん、あたしに恋愛感情があるわけじゃないんでしょ?」


この間もそう、冗談で気があるような言葉を掛けたり、キスしようとしたり。

これが、大人の男の人のやり方なの?

秋ちゃんから少し距離をとって、猜疑(さいぎ)の目で見つめていると。


「ごめんね、混乱させて。……でも、俺は君が思ってるほど大人じゃないんだよ」


力無くそうこぼした彼は、何かを自分の中に閉じ込めるように目を伏せた。