悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~

「電話、柳くんと?」

「……聞こえた?」

「ん……ちょっとだけ」


ごめん、とバツが悪そうにする秋ちゃんに、あたしは苦笑しながらわざと明るい口調で言う。


「ケンカ、しちゃった」


柳のあんな冷たい声、初めて聞いたかも。

あたしが好きなのは柳だけなのに、誤解されちゃったかな。


「好きな人とケンカするって、結構ダメージ大きいんだね……」


そんなことも初めて知ったよ。

笑って済ませたいのに、唇の端は上を向いてくれない。

些細な言い合いだったけど、やりきれなさから涙が込み上げる。


俯き、唇を噛んで堪えていると、秋ちゃんが近寄る気配がした。

そして、そっと引き寄せられるあたしの頭。


「秋、ちゃ──?」


トン、とぶつかったのは秋ちゃんの胸で、あたしの身体は彼の腕にすっぽり包まれていた。


わ、わ、何!?

突然の抱擁に、驚きで声が出ない。


「またそんな顔して……柳くんに関わってるとロクなことがないな」


カチカチに固まるあたしを抱きすくめた秋ちゃんは、耳元で甘く囁く。


「俺が慰めてあげようか?」