悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~

来る時は降ってなかったから持ってこなかったんだよな。でも。


「これ借りるから平気」

「えっ!?」


ひよりの手から傘を奪って開く。

唖然とした表情の彼女にほくそ笑むと、その細い腕を掴んで自分のもとへ引き寄せた。


「一緒に入ればいいじゃん」


じわり、赤みが増していく頬。

ためらいつつも抵抗はしない姿にクスッと笑い、小さなひよりが濡れないように傘を傾けて歩き出した。


「……こんなとこ、柳のファンの子に見られたら刺されるかも」

「そうなる前に守ってやるよ。俺はお前のヒーローなんだろ?」


得意げに口角を上げて見下ろすと、ひよりは「口が上手いんだから……」と呟いて、バッグを胸に抱きしめてますます縮こまった。


別にからかってるわけじゃない。

今までいじめてばっかだったけど、本当に守ってやりたいと思ってるんだ。


……いや、そんな優しいもんじゃないか。

誰も手出し出来ないくらいのところへ、コイツを奪い去ってしまいたい──

と言った方が、正しいかもしれない。


小学生の頃は、離れていくのを引き留めもしなかったけど。

今はもう、遠慮なんかしたくない。