悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~

顎に手をあてて昔を思い出すように視線を宙にさ迷わせる柳は、あたしがどれだけつっこんでもまったく気にしていない。

そういえば、こいつはあたしのことを“ひよこ”って呼んでからかっていたんだよね。

外見は成長しても、やっぱり中身は変わってないな。


意地悪されて憤慨するあたしと、それをクールに受け流す柳。

久々の再会にもかかわらず、昔のままのやり取りをしていると、それを眺めていた深山さんが呆れたようなため息を吐き出した。


「……何なんだ、お前らは」

「「くされ縁です」」


独り言みたいな深山さんの言葉に、あたし達の声が重なる。

じとっと横目で睨むあたしと、柳の冷ややかな視線が交わった。

そんなあたし達の耳に、本性を現した深山さんのダークな声が届く。


「あー萎えるわ。もっと手軽にヤれるかと思ったのに」


ぽりぽりと頭を掻きながらこっちへ向かってきた彼は、ほんの少し逃げ腰になるあたしに、ケーキの箱を差し出す。


「なんかめんどくせぇことになってきたから帰るわ。これはあげるよ、俺甘い物嫌いだから」


素っ気なく言われて、カチンと怒りの栓が外された気がした。