「秋ちゃんって誰だっけー?」


口をもぐもぐさせながら首をかしげる大地。

あの頃、大地はまだ幼稚園児だったから、覚えていないのも無理はない。


「大地もよく遊んでもらってたんだぞ。今度うちに呼んで、久々に皆で食事しようか」

「いいわねぇ。腕をふるって料理作るわよ」


お父さんの提案に、お母さんはすでに乗り気になっている。

秋ちゃんと食事かぁ……。たしかに、久々にゆっくりいろんな話したいな。


「秋ちゃん、何の教科担当になるんだろ」

「たしか古典って言ってたぞ。ちょうど今の先生が産休に入るんだろ? その代わりで秋史くんにお声が掛かったらしい。先生の中に知り合いがいるんだそうだ」


そういえば。と、ふっくらしたお腹で教壇に立っていた女の先生を思い出す。

秋ちゃんが教えてくれるなら、いつも眠くなる古典の授業もしっかり聞けるかも。


「家庭教師と掛け持ちしてるみたいだから、勉強で困ったことがあったら教えてもらえばいいんじゃないか」

「へぇーすごいね!」


大地が感心したような声を上げた。

お父さんも終始ニコニコしながら、こんなことを口にする。