「リカ!」
翌朝、正門をくぐる直前、ふわりと揺れる長い髪を見付けたあたしは声を上げた。
立ち止まり、少しだけ振り返ったリカは、無愛想な顔であたしと隣にいる亜美を見据える。
「……何?」
「あのさ……昨日、実験室であたしが荷物落とした時のことなんだけど」
あたしが何を聞くかわかっているかのように、リカはまったく表情を変えない。
「ペンケースに入れてあったピックも落としたみたいで、探したけど見付からないの。……リカ、知らない?」
はっきり聞いてみると、彼女は一度目を伏せて、
「何でひよりがピックなんて持ってるの?」
と、逆に質問してきた。
ドキリとするけど、これはあたしも想定内。
「……柳に、もらったから」
「いつもらったの? スタジオに行った時はそんなやり取りしてなかったよね」
スタジオに行く前にもらっていたことを、正直に打ち明けるべきか悩んでいると、リカはいつものように腕を組んで言う。
「やっぱりあなた達、ただの幼なじみなんかじゃないんでしょう」
前なら“ただの幼なじみ”だと言えた。
でも、自分の気持ちに気付き始めている今は、そう断言することが出来ないし、したくない。



