悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~


「……い、おい東條。聞いてるか?」

「ひよちゃん!」


後ろの席の亜美にこそっと呼ばれた声で、ペンケースの中に入れたままのピックを見つめていたあたしは我に返った。

数学のおじさん先生があたしをじっと見ていて、その後ろでは女子二人が黒板に数式を書き始めている。

うわ、もしかして今あたしも当てられてた?


「ボケッとしてないで、宿題で出してたこの問3の答えを書いてこい」

「は、はいっ!」


周りからクスクス笑われる中、ノートを持ってサッと立ち上がる。

あぁダメだ、最近まったく集中出来てない……。

前の黒板に向かおうと皆の机の間を縫って歩いていき、リカの席を通り過ぎようとした瞬間。


「っ、うきゃっ!?」


何かにつまづき、変な叫び声を上げたあたしは、前のめりになって派手にコケた。


「いったぁ……!」

「何やってんだ、大丈夫か?」


心配そうに声を掛ける先生だけど、笑い堪えてるし!

超恥ずかしいし、これ絶対膝にアザ出来るよ……何なのいったい!?


皆も爆笑する中、床に手と膝をついたまま斜め後ろを振り向くと、足を組んだリカが意地の悪い笑みを浮かべている。


「ごめんね、ひより! 足が長くってぇ」

「リ~カ~~!!」