悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~

「あの歌を習ってたから楽しめたんだぜ。そう思えば無駄じゃないじゃん。
無意味なように見えて、ちゃんと役に立ってるんだよ。すげぇ些細なことかもしれないけど」


腕を組み、壁に背中から寄り掛かってけだるげに立つ柳から発せられたのは、なんだかマジメな言葉。

それは、あたしの胸にしっかり届いていた。


損をしたように思えた習い事の時間も、考え方一つで変わってくる。そのことをあたしにわからせるために、今弾いてくれたんだ。

柳はものすごくポジティブなんだな。呆れちゃうくらい。

でもそれが、あたしをこんなにも穏やかで温かい気持ちにさせてくれる。


ちょっぴり感心した気持ちで、少し長めの髪の毛が無造作に流れる横顔を見つめていると、その瞳がこちらを向いた。


「ひよりの英語の発音、たぶん涼平よりいいし。ボーカル代わってくんない?」

「ダメだよ!」


笑い合っていると、近くにいたお客さんの男性が、ビールを手にニコニコしながら言う。


「二人いいコンビだねー」

「「くされ縁ですから」」


同じ言葉が重なって、お互いに目を見合わせたあたし達は、ぷっと吹き出した。


……でもね。あたし達の間には、くされ縁以上に繋がるものがあるように感じるんだ。

それが何なのかは、まだわからないけれど。