悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~

「これ見るかい?」


突然の登場に目をぱちくりさせていると、柳がほわんと笑った。


「あ、マスター。ありがとうございます」

「マスター!?」


思わず繰り返してしまったあたしに、おじさんはにこりと微笑んで頷いた。

このクマさんみたいな人がのんびり屋のマスターなんだ。


「私はビートルズが大好きでね、大崎くんがギターを弾いてくれるとつい歌ってしまうんだ」

「店のことは他の従業員に任せっきりでな」


ボソッと呟いた柳の一言に、他人事のように笑いながら、マスターはあたしを見下ろす。


「ギターに合わせて歌うのはなかなか気持ちいいものだよ。君も一緒にどうだい?」

「えっ……」


それは一緒に歌おうってこと?

いやいや、なんかお客さんが皆こっちに注目し始めてるし、恥ずかしいんですけど!


手渡された歌詞カードと、隣に立つニコニコ顔のマスターを交互に見て戸惑っていると。

そんなあたしをよそに、ふっと笑みを漏らした柳は、再び“Let It Be”のイントロを弾き始めた。

それに合わせてマスターが歌い出す。何気にいい声だ。