悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~

ふと、あることに気付いて問い掛けた。


「ギター……いつものと形が違うんだね」

「あぁ、これはアコースティックギター。バンドでやってんのはエレキだけど、ここであんな騒がしい音は出せないから」


ジャラン、と軽く弦を鳴らすと、たしかにバンドで聞いている音とは違う、優しい感じの音色がした。

略してアコギってやつか。このひょうたんみたいな形をしたのがそうなんだ。

ストリートミュージシャンとか、こういうの弾いてるイメージかも。


ふむふむと眺めていると、やっぱりギターを持つ姿が絵になる柳は、ある曲を弾き始める。

優しく奏でられるこの曲は、きっと皆一度は聞いたことがあるだろう、ビートルズの“Let It Be”だ。

最初の部分だけ弾いて手を止め、あたしに尋ねる。


「この曲知ってるよな? 昔、英会話教室で習ったって言ってなかったっけ」

「うん、そういえば。よく覚えてるね」

「歌詞わかる?」

「んーとね……」


出だしの英語は何だっけ……と考えていると、横から誰かの手がスッと出された。

その手に持たれているのは、古びた歌詞カード。

振り仰ぐと、顎ひげを生やし優しげな瞳をした、クマさんのようなおじさんがあたしに微笑みかけている。