悪縁男子!~心ごとアイツに奪われて~

「ひよちゃんひよちゃん! なんかいー感じじゃない!」


金髪エロ猿がノリノリで歌う中、あたしのニットの袖を軽く引っ張って、亜美が興奮気味に耳打ちする。


「何が?」

「深山さんとだよ! 周りから見てると普通にカップルみたいだよ!?」

「うそぉ」


ちらりと彼を見やると偶然目が合って、薄い唇の端を持ち上げて微笑まれる。

ドキン、と反応するあたしの心臓。

え、これって何? まさかあたし……深山さんのこと好き、なの?


確信が持てないながらも、そう意識すると単純にドキドキしてしまう。

この気持ちは恋なのか確かめたくて、カラオケ中、あたしはずっと深山さんを盗み見ていた。



結局三時間も続いたけれど、リカがテンパり過ぎることも、亜美が抜け出すこともなく無事終了。

先輩達が会計をしてくれる間、あたし達は3人で固まって会議をする。


「この後ってどうするんだろうね?」

「私はもう帰るわよ、19時になっちゃうし」


リカが小さなバッグからスマホを取り出して言う。

彼女の家は門限が厳しい上に、19時以降はお手伝いさんも迎えに来てくれなくなるのだとか。