幼稚園時代。 買ってもらったばかりのクレヨンを、初めて使おうとした瞬間にアイツは緑色を奪って逃げた。 小学校時代。 給食の特別メニューだったデザートの類(たぐい)や、 アイツが教科書を忘れた時は、必ずあたしのものを奪われた。 ──そして、現在。 アイツはあたしの身体に腕を回して、鼻先が触れ合うほどの至近距離で囁くんだ。 「お前の唇、奪っていい?」 ────**。・+°