「あのこに会えてよかった」
お母さんはそう言って、私たちを見送ってくれた。
渚くんの姿も、気配も消えた。
成仏、してくれたのだろう。
「よかったねー。明日香」
にこにことした笑顔でこちらを見るひかり。
そうだねと、肯定して二人に聞く。
「私はこれから部長のところに行くけど、どうする?」
報告、しておいた方がいいと思った。
明が答える。
「俺たちは用事があるから先に帰らせてもらうよ。場所、わかる?」
用事がなにか、気になったが追求はしない。
「分かるよ。部室にいるんでしょ」
私が答えると、明はなら、またねと言ってひかりと共に去っていった。
私も、部長に会いに行かないと。

学校には誰もおらず、一度も生徒に会わなかった。
ガタガタと部室のドアを引き、開ける。
休日にも関わらず、部長はそこにいた。
「あっれー?明日香ちゃんどしたのー?休みにくるなんてさー」
本を読んでいたらしい部長が、私に気づいた。
今日も、頭にはタオルがある。
「こんにちは、部長。今日は、お話に来ました。渚くん、成仏、してくれましたよ」
私が近くからパイプ椅子を引き出し、座る。
部長はしおりをはさんで本を閉じる。