渚くんの家にたどり着いたのは、一時間ほど立った後だった。
「あ、明日香ー!」
ひかりが走る私に気付き、手を振っている。
「ごめん…遅くなった…!」
家の前にいるのは、ひかり、渚くん、明の3人。
「じゃ、揃ったし、行くか」
明の号令で家の方へ向く。
家の中からは前のようには子供の声が聞こえない。
シンッとした空気に包まれる家は、来るものを拒んでいるようだった。
ピンポーン
インターホンが鳴り響く。
出てきたのは女の子ではなく、痩せた和服の女性だった。
渚くんの、お母さん。
「あの…どちら様…でしょうか……」
怪訝な顔をするお母さん。
私たちのことは覚えてないみたい。
「……初めまして。鎖辺 明日香と申します。あなたの息子さんのことで…お話があります」
私か伝えると、お母さんは辛そうな顔をしながら
「では…お入りください…」

家の中に通してくれた。
光と明に目配せし、一緒に入ってもらう。
渚くんは小さく微笑み、
「行ってらっしゃい、お姉さん。伝言、お願いします」
と言って頭を下げた。