机の上に置かれたケータイが震え、カタカタと音がした。
その音で目が覚め、自分が寝てしまっていたことがわかる。
「よう…くん…。起きて…」
手を伸ばすが陽くんの腕に阻まれ、手が届かない。
「ん…ごめん…」
まだ寝惚けてる陽くんが手の力を弱めてくれた。
ケータイには着信とメールがひとつ。
『渚くんところにはいつ行く?』
どちらもひかりからだった。
「陽くん…。私、行かなきゃ…」
陽くんの腕をほどこうとするが、抱き締める力は強くなる。
「明日香…ちゃん…」
背中に顔を埋め、強く抱き締められる。
「陽くん。ちゃんと、帰ってくるから。私は陽くんのもとに帰ってくるから。だから…行かせて…?」
陽くんに聞こえるように言う。
陽くんは寂しそうな顔をして、手を離してくれた。
「行ってきます、陽くん」
立ち上がり、陽くんの柔らかな髪を撫で、部屋に戻る。
急いで服を着替えて家を出た。
光にメールを打ちながら家を飛び出した。
『渚くんには、まだ秘密があるかもしれない』

そんな文章を打ち込んで。