｢そう言われてもなぁ…。明日香ちゃんの見てないところで、ちゃんと運動してるんだよ。知らなかった？｣
笑いながら、私の腰に手を回す。
昔から、陽くんはこの体勢を気に入っていて、陽くんが甘えたいときにやりたがる。
｢知らない…。だって、学校あるしさ…。ねぇ…陽くん…｣
陽くんに寄りかかり、前から知りたかったことを聞く。
｢陽くんはどうして、私を引き取ったの？｣
胸が、ドキドキする。
今まで、怖くて聞けなかった。
私を引き取ったとき、陽くんはまだ、28歳。
私はまだ、7歳にすらなっていなかった。
なのになぜ、私を引き取ったのかずっと疑問だった。
｢僕の両親が、ピアニストと画家だってことは…知ってるよね？｣
ぽつりと、答えてくれる。
陽くんの両親は有名な芸術家。
でも、日本ではあまり好かれず、海外にずっと住んでいる。
｢僕はずっと、家政婦さんに育てられた。両親の記憶は写真で見ただけ…。会ったことも覚えてない。だから、家族が…。一緒にご飯を食べたり、買い物に行ったり、テレビ見て笑ったりできる家族が欲しかった。明日香ちゃんが来てくれて、僕はすっごく、嬉しかった…｣
声を隠すように、私の肩に顔を埋める陽くん。
濡れた感触を感じながら陽くんの頭をなで、
｢私は、陽くんと…ずっと一緒だよ。急にどっかに行ったりしないから…｣
優しく囁くように呟く。

話してくれてありがとう。

そんな気持ちを込めて。