「『何も知りたくない』。そんな願い、その場しのぎにしかならないよ」
私が言った。
悪霊は、頬の紋様を付けたまま成仏すると、地獄に長い間囚われる。
改心、つまり自分の死後の行いを認め、悪かったと思えば、紋様は消える。
「私は、この人に苦しんで欲しかった。だって。渚に留守番を頼まなかったら。印鑑の場所を明確にしていたら。もっと速く家に着いていたら。渚は…まだ、生きていたかもしれないのに」
女の子が目を伏せたまま、言葉を紡ぐ。
私は、女の子の考えがわからなかった。
「ねぇ。このお母さんが苦しんで、何が変わるの?渚くんが生き返るの?渚くん…悲しんでたよ。あなたはそうしたかったの?」
女の子に詰め寄る。
「で…でも…復讐したいよ…。渚、死んじゃった。もう一生遊べない。嫌だよ…。憎いよっ…!」
女の子の目からこぼれ落ちる涙。地面にたどり着く前に、消滅する。
明とひかりは何も言わず、私が説得するのを待っている。