陽くんが眠りについたのを確認し、家を出る。
陽くんにはあまり心配をかけたくないから。

まあでも、気付いているとは思う。
私が抜け出した次の日は決まって不機嫌になるから。

男の子の家の前に着く。
いつも通り、男の子が立っている。
「あ、お姉さん。こんばんは。どうしたの?こんな夜遅くに」
不思議そうな顔。でも、どこか作られた顔だという印象があった。
「こんばんは。ねえ、渚くん。明とひかり、知らない?」
一応、聞いてみる。
男の子は、首をかしげ
「うーん。見てないなー。どうして?」
と答えた。私は男の子の表情で分かった。
「そっか。二人は中にいるのね。二人を助けるためよ」
そう言って門扉を開けようとすると
「どうして…わかったの?」
と、問いかけてきた。私は少しだけ男の子と視線を合わせ、
「ずっと、私を避けようとするから。渚くんにも、嘘をつくように頼んでると思ったから。あとは、私が来ても、君はたいして驚かなかったから。普通、こんな夜遅くに一人で出歩く人なんていないのにね」
それだけ言って、家の中に入った。