部長がやる気ないみたいなので、私も帰ろうと思う。
「では、失礼しますね、また明日」
部長はひらひらと手を振って私を送った。

家に帰ろうとしていると、ある家の前で足が止まった。
普通の日本家屋。子供の遊ぶ声が聞こえる賑やかなお家。
「………いる」
その家の玄関の前、夕方に近い時間なのに、影のない小さな男の子がいた。
「お姉さん、僕が見えるの?」
私に気づいた男の子が話しかける。
まだ小さい子だが、影がないのなら、幽霊なのだろう。
「うん。私は見える人だよ。なにか…あったの?」
体質なのか、いつの間にか幽霊が見えていた。
おそらく、両親が亡くなったときから。