陽介と名乗った彼はキョロキョロと見回しながら私の後についてきた。
リビングで待っているようお願いし、お茶をいれるためにキッチンへ向かう。
茶葉は、どこにあるのだろう。自分用にお茶をいれたことなんてないし、お母さんがいつも、いつの間にか出してくれていた。
「弥生姉さんは、いつも乾麺の入れている棚の奥に入れていたよ」
陽介さんの声だ。
リビングで待っているよう言ったはずなのに、私の後を追ったようだ。
「陽介…さん?乾麺ならシンクの上の棚です。あすかは手が届かないので、取ってもらえますか?」
シンクや調理台ですら踏み台がないと届かないのだ。上側の棚なんて脚立がないと無理だ。