「明日香…?」
暖かな布団に包まれ、背中を柔らかな声がくすぐる。
お母さんだ。
「もう…寝たのかしら?」
少し、笑ったような声。
いつもなら寝ていたけど、今日は眠れなかった。
本当は、お母さんのところに行きたかったのだけれど、お母さんの声を聞くきなんだか安心して、目をつむることができた。
お母さん。私は今日もいい子で寝てるよ。
心で呟く。聞こえないように、ちょっとしたイタズラの気分で。

ねぇ、お母さん。私があのとき、お母さんに眠れないと言ったら、どうなっていたのかな。

お母さん。

死なないで、いてくれたのかな。