嘘告白




「んー、やっぱ告白はやめておいた方が...」



私は急に不安を覚え、優奈に言ってみた。



「大丈夫じゃない?」と横で美紅が口出しする。



「だってさ、小野柊也って誰とも付き合わないじゃん」

「そうだけど...」

「ほら、いつかあったじゃん」

「何かあったっけ?」



私は美紅の顔をじっと見る。




「学年で可愛い柚希ちゃんが告ったことあったでしょ」



あぁ、そういえば。
今年の夏、学年で1番可愛くて、同級生からも先輩からも異常なほど告白されている女の子。



「小野柊也が好きで告白したけど、結局、あの柚希ちゃんでさえ振られたじゃん」



「あったねぇ」と頬杖をつきながら優奈が呟く。




「まぁあれだ。だから安心しなさい、彩花」

「私が可愛くないって言いたいんでしょ、美紅」



美紅は「拗ねないでよー」と私の頭を撫でた。



「どうせ振られるんだし、罰ゲームやりますよっと」



私が言うと、2人は勢いよく私の顔を見る。



「よし、じゃあ下駄箱に手紙書いて入れよう!」


優奈は自分のペンポーチから可愛らしいメモ帳を取り出し、私に一枚渡した。




「え、なにこれ。書くの?」



優奈はシャーペンを机に置いた。
まるで、書けと言っているかのように。



私はその場にしゃがみ、ペンを持った。




「...なんて書こう...」

「放課後、門の近くで待ってます。とか」



美紅がそう言うので、私はその通りに書いた。


少し気が引けるけど、罰ゲームだし。
ごめんね、小野くん。




私は、早速下駄箱にその手紙を入れに行こうとした。


しかしその足は止まる。



「...ねぇ、小野くんって出席番号何番?」


私の問いかけに、優奈が素早く「6番」と答える。


私は小さく頷き、教室を出た。