今の気分的に小野くんのところには行きたくなかった。
小野くん大好き女子が猿みたいに騒いでるし。
でも、行かなきゃあのクマ、ずっとあいつが持つことになる。
どうせ、2人の時に返してって言っても返してもらえないんだから、みんながいる前で返してもらおう。
「なにそのストラップ、可愛い〜」
「こういうの好きなんだ‼︎なんか意外〜」
周りの女子が好き勝手騒ぐ。
それは小野くんのじゃなくて私の。
悪魔みたいなやつがクマのストラップ付けるわけないでしょ。
机と机の間をすり抜け、道を塞ぐようにして入り口にいる、小野くんの前に立った。
小野くんは私の顔を確認すると、にこっと笑って「彩花」と名前を呼んだ。
は?
今まで「彩花ちゃん」か「お前」しか言わなかっただろうが。
なんで今このタイミングで言うの?
猿みたいな女子共は急に静かになって「え?」と戸惑いの声を漏らす。
ニヤニヤしている小野くんの顔を見ると、「こいつ分かってやってんだな」と苛立ちを覚える。
「何ですか」
「これ落としたでしょ、クマのストラップ」
クマのストラップを私の顔に近付ける。
「どうも」
私は目の前にいるクマを握りつぶすように奪った。
クマごめん。
ストラップも返してもらったことだし、さっさと美紅の所へ戻ろう。
「あーストップ」
私の腕を掴む小野くん。
周りからキャーと声が聞こえる。
「何?」
「今日も一緒に帰るよね?」
やりやがったこいつ。
「どういう関係?」「付き合ってるの?」と女子は囁き合う。
「迎えに行くから待ってて」
それだけ言うと、猿共を引き連れて私のクラスを去っていった。

