「あ、きたきた」
教室に入ると、美紅が手を振っていた。
「優奈は?」
「今日電車乗り遅れたみたい」
「あ、そうなんだ」
私は机の横に鞄を掛け、すぐ椅子に腰掛けた。
「...」
さっきの出来事が頭から離れなくて。
だって、ドキドキしたんだもん。
男の子と手繋ぐのなんて、小学生以来。
ドキドキしてたのに、心の何処かはズキズキしてて、なんだか息苦しい。
息をしたいのに、思う通りの呼吸ができない。
むしゃくしゃする。
私はそんな想いをかき消そうと口を結んだ。
そして大きく深呼吸したあと、美紅の席へ向かう。
1人でいたら息詰まりそう。
美紅と話していると、急に教室が騒がしくなった。
普段も騒がしいけど、何ていうか...女子の声が飛び交っている。
「彩花、彼氏さん来てるよ」
"彼氏"という言葉に反応する。
教室の入り口を見ると、確かにあいつはいた。
「何しに来たの...」
小野くんは私に気が付くと、手に持った何かをぶらぶら揺らしている。
私は目を細めて、一体あれが何なのかを認識しようとする。
「あっ‼︎」
私は机の横に掛けた鞄をみた。
確かに無くなっている。
クマのマスコットキーホルダー。

