モヤモヤした気持ちを抱え、私はその日を過ごした。
授業中も休み時間もお昼ご飯を食べているときも。
彩香と美紅の言葉が頭から離れなかった。
期待してしまうような言葉。
小野くんとなんて、昨日の告白で喋るの初めてだったのにもう好きになっちゃうなんて可笑しいでしょ。
そもそも、小野くんは私のこと知らなかった。
名前すら知らなかったのに好きになる?
いや、名前知らない人でも好きになったりするか。
自問自答を繰り返し続け、優奈と美紅の待ちに待った放課後になった。
「彩香、頑張ってね」
マフラーを巻いた優奈が私の肩をぽんっと叩く。
「私たちはドーナツを食べに行きますので」
「いいなぁ。ドーナツ」
「学年で人気の王子様と帰れるあんたが羨ましいわ」
美紅が拗ねる。
教室で待ってろって言われたけど、教室の前で待っててもいいよね。
優奈と美紅と教室を出た。
「じゃーねー、彩香」
優奈と美紅が手を振りながら歩いて行った。
私は胸の前で小さく手を振る。
2人がいなくなった瞬間、急に緊張を覚える。
思った以上に廊下は寒かった。
でも、1人で教室にいるのも何だし...。
私は俯いて自分の足を見た。
「彩香ちゃん」
廊下に響く声。
私は声のする方に目を向ける。
「小野くん」
私は小野くんの姿を見つけ、小野くんの側に駆け寄った。
「ごめん、待った?」
「ううん、大丈夫」
「じゃあ、帰ろっか」
すごく王子様している笑顔に私の胸は高鳴っていく。

