時計を見た。
 PN11:00。もうすぐ、私の誕生日が終わる。

 とうとう雄太からの連絡はなかった。バイトも入れずに、朝から携帯とにらめっこ。
 けれど、虚しくもそこからメロディーが流れることはなかった。

 洪水のように涙が溢れ、枕がびしょびしょに濡れている。
 布団にくるまり、鼻を啜る。

 雄太の……バカ。

「…………っ!」
 携帯からしっとりとしたバラードが流れた。
 確認しなくても、誰からなのかわかる。
 胸に手を当て、深呼吸をし、通話ボタンを押した。

「もっ、もしもし?」
「……おー、オレ」

 聞きたくてたまらなかった、雄太の声。
 嬉しくてまた涙が出てきた。
「今から美紅ん家行っていい?」
 私も、会いたい。会いたいけど、
「だめ」