少し暗い路地の奥に小さな喫茶店がある。

ほぼ毎日と言っていいほど向かう足はスラスラと目的地まで進みあたしは軽く一息吐いてから薄い茶色の扉を開けた。 

開くと同時にカランカラン…と鳴り響く鐘の音が新鮮に耳に届く。



「いらっしゃい」 



カウンター越しから聞こえてくる声に少しだけ振り向き、あたしは軽く小さく頷いて窓際の隅にある席にあたしは腰を下ろす。

いつもあたしが座る場所。 

得にここに座りたいって訳でもなかったけど、いつの間にか気がつけばあたしはこの窓際の隅に座るようになってた。

人通りが少ない路地をボーっと見つめるのもあたしの日課になってる。


そうなったのも自分の居場所がなくなってからだった。


「はい。いつものソーダ水」


窓から路地を見つめていると、ふと聞こえた声にあたしは視線を声の方に向ける。

目の前に置かれたのは綺麗に透き通った緑色のソーダ水。


「ありがとう」 


ここに来たら必ず飲むソーダ水。

あたしはソーダ水を見つめながらポツンと呟いた。