翌日、久住君は登校して来た。
マスク着用で、何度も咳をしてたけど熱はないらしい。
喉の痛みも治まったらしく、後は咳だけだって。
それを、今職員室で彼は笑顔で話している。
「俺、バンド頑張りますから!辻先生も見て下さいよ!」
隣にいる辻先生にも、話を振ってニコニコ笑顔を向けた。
垂れた目が更に小動物を思い出させるのだろう、辻先生は含んだ笑みで
「必ず行くわ」
と、言った。
久住君は無邪気に喜んでるけど、私は心の声がわかるから曖昧に笑うしかない。
「それじゃ、失礼しましたー」
まだ鼻声の彼は手を振って、職員室を後にした。
私と辻先生は無言で目を合わせる。
「……文化祭、終わったらね」
「……」
私が電話をしたであろう事には気付いてるだろう。
そして、上機嫌の久住君を見て、何かを察してるだろう。
だけど、今は飲みに行く暇がないのだ。
話したいけど、今は無理。
辻先生の言葉に私は静かに頷いた。



