急に温もりが無くなった左手が、異様に寂しい。


一度手を繋いだだけなのに、ここまで溺れてしまうものなのか。


なんだか可笑しくて、少し苦笑いしてしまった。



「二人でどこに行ってたの?」


岡田さんが震える声で話し出す。



「ねぇ、わかってるの?二人は……二人は姉…「岡田さん、少し話しましょう」」


俺は、岡田さんが決定的なことを言う前に彼女の言葉を遮った。



今でも十分傷ついている芽依を、これ以上傷つけたくなかったから。



「芽依、先に家入ってて。すぐ戻るから。」


芽依のところに。


芽依のいる、俺たちの『家』に……



俺は芽依から離れると、岡田さんのところに行く。



「あっちゃん!!」


後ろから、芽依が叫ぶ。



「待ってるから……ずっと、待ってるから…」


なぁ、芽依。


今絶対泣いてるだろ。


俯いて、見えないようにしてるけど。


ぎゅっと握った拳が震えてるのが見える。



泣く必要なんかない。


だって、俺はまた戻るから。


俺たちは姉弟なんだから……




*