パッと目が覚めて


暗くなった窓の外を見る。



時計は夜の9時を指していた。


「あっちゃん、起きて…そろそろ帰らないと」


隣でスヤスヤ眠るあっちゃんを揺さ振って、起き上がろうとした時


「……っ」


下腹部に感じる鈍い痛み


腰に感じる怠さ



「痛い……?」


いつのまに起きたのか、うつ伏せのあっちゃんが私を見上げていた。



「ん、ちょっとね…」


本当はちょっとじゃないけど


すごくすごく痛いけど


でもあっちゃんとなら、甘い痛み

愛しい痛み



そう思える。



「…ありがと、芽依」


あっちゃんは私を抱き締めて、瞼にキスをした。



「すっげー幸せだった。死ぬ程気持ちよかった。」


あっちゃん、ちゃんと聞こえてたよ?


あっちゃんの心の中の声


『愛してる』って声


ちゃんと、聞こえてた……



「ねぇ、あっちゃん」


「ん?」


「『篤志』って呼ばなくていいの?」



普通、恋人にはちゃんと名前で呼んでもらいたくない?


ずっと『あっちゃん』だったからすぐには無理かも知れないけど、あっちゃんが望むなら……


「んー、別に。どっちでもいい」


「え……?」


「『篤志』もいいけどさ、『あっちゃん』て呼ぶの芽依だけだし。特別な感じして嬉しくない?」


嘘……


それって、『あっちゃん』て呼んでいいのは私だけってこと?



「う、嬉しい……」


嬉しすぎる……



*