頭が、動かなかった。
下駄箱に来たら、芽依とあの男がいて……
『杉浦くんを待ってた』
『杉浦くんに教えてもらうから!』
芽依の言葉を一つずつ頭の中で反芻してみる。
なぁ、芽依。
俺はもういらない?
芽依にとって俺はもう必要のない人間?
アイツがいるから?
「あの二人、付き合ってるのかしら」
隣で、岡田さんが呟いた。
………知らねぇよ。
でも、あの男の俺を見る瞳。
あれは明らかに敵を見る瞳だった。
「杉浦くん、平岡さんに告白したらしいわ」
………やっぱり。
芽依も、アイツのことが好きなのかな?
未だに芽依を引き止めようと上げたままの手が泣いてるような気がする。
その手を見て、岡田さんが小さく言った。
「……二人は、両思いなのかもね」
俺はギュッと拳を作って歩き出す。
「早く帰りましょう。今日は、疲れたから……」
ため息を吐くと幸せが逃げるって言うけど
逃げるほどの幸せが見当たらない俺はどうしたらいいんだろう?
芽依しかいないのに。
………俺を、本当に幸せにしてくれる人は。
*