『ごめんね、こんなお姉ちゃんで』


芽依の何気ない一言が突き刺さった。



芽依の口から聞きたくない言葉の3位が出てきた。


……1位は『彼氏できた』で2位は『弟』なんだけど



姉ちゃんに、なってほしいわけじゃなくて


弟に、なりたいわけじゃなくて




芽依は覚えているのだろうか


あの約束を




「篤志〜」


俺を追い掛けてきた悠が隣に並んだ



「なぁに拗ねてるの」


「………拗ねてねぇし」


「あっちゃんは素直じゃないねぇ」


そう言って、悠は優しく笑った



「なぁ」


「んー?」


「俺はちゃんと……アイツの弟ができてるかな」



俺は髪をかきあげて下を向いた


「わざわざ……嫌いな言葉を出さなくていーんだよ、篤志」



悠は軽い口調で答えた



……救われる


好きでいていいんだ、と思わせてくれる



「大丈夫だよ、篤志」



温かい風が、窓から入ってきて悠の茶色い髪を揺らした


桜が舞っている



この季節になると思い出す


桜の木の下で、出会った彼女


あの瞬間に芽生えた気持ち


今も変わらない愛しさ



「授業、サボるか」


悠の言葉に、無言で頷いた



*