―――「いろいろ」「よろしく」って。



なんともまあ、便利な言葉だ。


具体的に何をすればいいかは指定せず、でも、「とにかく全般的に上手いこと面倒を見てやってくれ」という、ちょっと無責任な意図はしっかり伝えてくる………。



まあ、磯辺先生は忙しい人だから、ね。


一学生のためにそんなに時間を割けないのは仕方がない。



他大学の学部を卒業してうちの大学院に入るというパターンは、文系学部ではけっこう例外的だ。

理系だと、わりとそういうケースもあるらしいけど。


しかも、D大学みたいな一流大学からわざわざうちのようなエセ一流大学に転入してくるパターンは、かなり珍しい。



そんなレアケースの大学院生のために、この大学や文学部のことを一から説明したり、

国文学専攻のシステムやら、教員や講師や各ゼミの紹介などをいちいち説明したりするのは、多忙を極める教授にとっては正直なところ手間だ。



というわけで、磯辺先生は、自分のゼミに入る新しい大学院生のお世話を、助教のあたしに一任した、というわけ。