「じゃあ、20分前に」

首を横に振られた。待ち合わせ通りに来なさいと言われたようだった。

それなら、彼も待ち合わせ時間守って下さいと言いたいのに、付き合っている内に、私も彼の気持ちがどことなく分かってしまう。『俺はいいんだよ』と、私を主体で考える彼は、そう思っているに違いない。

手繋ぎから、腕組みをする。
冷えた体を少しでも温めたくて密着した。


「あ、今日は寄りたいところがあるんですけど、いいですか?」

「……」

立ち止まる彼の腕を引く。

向かうは、宝くじ売り場。
意外そうな顔をする彼に、補足する。

「えっと、看板にキャリーオーバー3億とかあったから。す、数字を選ぶものなんですけど、倉石さんの誕生日でやってみました。三億あれば、倉石さんと温泉旅行行けるなぁって」

そう。と言いたげな表情。
この前買ったクジを売り場に持って行く。


三億はいいから、せめて一万円分ぐらいほしいなぁ。後のお金は、頑張ってバイトするから、倉石さんと旅行に。

と、思っていれば、売り場のランプが回った。

ハテナを浮かべていれば、売り場のお姉さんが興奮しきった様子で。

「お、おおおおっ、おめでとうございますうううぅ!一等三億円、大当たりですよおおぉ!」

私の思考回路を停止させるのだった。