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『とりあえず、彼氏さんとK県に温泉旅行行ってきたよ!でも、宝クジ落としちゃったー!まだ換金していないのに!見つけたら教えて!』
との文を、旅行写真送付で呟けば、ほとぼりは冷めた。
ニュースで、K県の観光客激増!とかやっていた。観光客増える前の静かな温泉地に行けて良かったですねーと、倉石さんと話してみる。
相変わらず、私が一方的に話す形。病気は完治していないみたいだった。
それでも、倉石さんと会える度に幸せなので良いのだけど。今日は幸せが二重になっている。
「倉石さんの部屋、やっぱり大人っぽいですよねー」
思った通りの落ち着いたリビング。
黒のソファーに座り、ガラステーブルに置かれたコーヒーを飲んでいた。
倉石さんは私の隣。コーヒー飲まないんですか?と聞けば、頷かれた。
「大学のみんなに、やっぱりお前は馬鹿だと、怒られちゃいました」
「……」
ナデナデされた。
「でも、色々言われましたけど、みんなやっぱり『友達』です。私を慰めるとかで、パーティー開いてくれました」
「……」
もっとナデナデされた。
猫にでもなった気分だ。彼の体に寄りかかる。
「あれ、倉石さん。あっちの部屋は」
「……」
「えっと」
手で目隠しされた。
南京錠がいっぱいついた扉だから気になったのだけど、何か大切な物をしまっているのだろうか。
何にせよ、本人が見られたくないなら無理には見ない。目隠しから抜け出せば、私を見つめる凛々しい顔つきが視界に入る。
近い。だから自然と、目隠し取れた後でも目を瞑ってしまった。
口付けの待機。
でも、なかなか合わさらない。
目を開ければ、彼は一ミリたりとも動いていなかった。
ーーあ、でも。