――――…ここは酷く暗い。




≪最近、あやめの声が聞こえねえな≫

≪………≫


近くに座っている殺樹に話しかける様に、カンナは呟く。
だけど、殺樹は口元に薄らと笑みを浮かべるだけで何も言わない。

それにカンナは心の中で舌打ちをした。


以前のあやめは不安定で、よく心の中で思う事がこちらにも聞こえた。
だけど、今のあやめからその声が聞こえない。

たまにチラホラ聞こえるだけだ。
あやめが動揺した時に。

さっきの草野の発言の時に、あからさまに動揺していたからカンナにはあやめの声が聞こえた。

多分、ここにいる殺樹もそれは同様のはず。
あやめの声は聞こえていた筈だ。


≪なあ、何で今までお前は出てこなかったんだよ≫


イライラと貧乏揺すりをしながら、カンナは殺樹に声をかける。
だけど、殺樹は一度ちらっとカンナを見てからまた興味なさげに顔を背けた。

それから、ぽつりと一言。


≪…出る時じゃなかった≫


そう発した。