“やめて”


フラッシュバックする思い出。



“じゃあ…俺と代わるか?”


そう、声がした様な気がした。
ハッとして、我に返る。


殺樹は今頃笑ってるに違いない。
それに、カンナも。他の人も。

結局、あやめは逃げるのだと。


…私は逃げない。絶対に。


「おかえりなさい」

笑顔で言えたかはわからない。
だけど、その後何も言われなかったから自然に言えたんだと思う。


どこにいても、何をしてても、私は見られている。
私の中の住人に。


「それじゃ、出かけましょうか」

「そうだな」

お義父さんは車の鍵を持つと、お母さんと一緒に玄関へと向かう。
先に出る二人から少し遅れて私も外へと出た。


ファミレスに向かう車の中で、携帯が震えた。