多重人格者【完結】

帰宅するまでの間、私はずっと考えていた。
カンナは何で今現れたのか。
どうしたいのか。
何をしたいのか。

それが私にはわからなかったから。


考えられるのは私と入れ替わって、自由に生活する事。

どうして今のタイミングなのかはいくら考えてもわからない。
もしかしたらいつでもよかったのかもしれない。


そして、殺樹は一体何者なのか。
もしかしたら、この考えすら内側で黙って聞いていて、嘲笑しているのかもしれない。


そんな事を考えていたらあっという間に家に到着して、私は鍵を取り出し玄関の扉を開けた。


「ただいま」


そう言いながら、私は自分の部屋へと向かう。
制服から部屋着に着替えると、リビングに顔を出す。

そこには洗い物をしている母親の姿。


「お母さん、ただいま」

母親は私に気付くと、蛇口を止めて笑顔を見せた。

「あやめ、おかえり。
今日のご飯どうしようか」

「何でもいいよ」

「んー?そう?
じゃあ、泰さんも早いらしいからどこか食事にでも行きましょうか」

「……お義父さん、早いの?」

「うん、さっき電話あってね。
定時に帰れるらしいから」

「じゃあ、ファミレスがいい」

「はいはい、あそこね。あやめ好きねえ」


呆れたように笑うと、母親は再度洗い物を開始した。