多重人格者【完結】

「…大丈夫」

「え?」


力の抜けた心君の腕から離れると、私は心君の顔を真っ直ぐに見る。


「大丈夫。
守ってもらわなくても」

「…あやめ」

「私は私で頑張るから」

「………」


くっと眉を下げて、悲しそうな顔をする心君に胸が軋む。

お願い、そんな顔しないで。
心君の事はもう、許してるから。

だから、もう私に関わらないで。

わかんないけど、心君を巻き込んだら取り返しのつかない事になりそうだから。


するりと心君の腕の中から抜け出ると、私は立ち上がった。

それから、スカートについた砂をパンパンとはたくと、

「“草野君”ありがとう」

私は心君にそれだけ伝えた。

目を見開いて、その言葉を聞く心君に胸が苦しくなった。
だけど、これは私の問題なんだ。

巻き込むことなんて出来ない。


ケリをつけられるのは…私しかいない。


心君から離れた場所まで来ると、頭に響く声。