多重人格者【完結】

「あ、は、はい!」

「じゃあ」

爽やかな笑顔を見せて、手を振ってくれる草野君に私はもう、失神寸前だった。


「だ、大丈夫!?」

「……葉月、大丈夫」


順二君と葉月が心配の声を上げる。
うっすら笑顔を見せる私は不気味だっただろう。

葉月の肩を借りながら私は、どうにか教室まで戻った。
あまりにも突然のことすぎて、足がもつれてうまく歩けなかったのだ。


「まさか、こんなことになるなんてね!!
あやめ、よかったね!!!」

葉月は私よりも興奮している。
当の私だが、まだ実感がなくふわふわしていた。


「…うん、本当に。てか、明日どーしよう」

「楽しんでおいでよ?」

「…不安だ」

「……私もだ」


葉月も私も一緒に俯く。

草野君はモテるから…。
どうしよう、まじで心配だ。


きっと、緊張して話せない。
ガチガチで、おかしなことしそうだし…。


だけど、草野君と出かけたい!
きっと、これを逃したら一生こんなチャンス巡ってこない。
そんな気がする。