多重人格者【完結】

パチっと目を開けた時、私は戻っていた。
自分の体に。

変な感覚。
自分の体なのに、戻るって。


目の前には心配そうに見つめる心君の顔。
少し、その顔を見るのが苦しい。


「カンナ!!どうしたんだよ、いきなり!!」


心君は目を覚ました私を“カンナ”と呼んだ。
だから、ゆっくりと口を開く。


「……心君、私だよ、あやめ」


それに心君は目を見開いて、驚いていた。
心なしか、心君の手が震えている様な気がする。


「……あ、や、め?」


一言、一言。
確認するように、しっかりと吐き出す。


「……そうだよ」

「……っ、」


ひゅっと息を飲んだ後、心君の顔はみるみるうちに歪んでいった。
それから、ぎゅうっと私の事を強く抱き締めた。