――――…ここは酷く暗い。


≪くくっ…≫

「…な、何をしたの?」


いきなり響いたのは、カンナの叫び声。


≪誰だ、お前は誰だ≫
≪お前なんか知らねえ!!≫


そう、カンナの声が何度もした。


目の前にいる男は、自らを殺樹と名乗った以外何も言葉を発さない。


≪あはは、あーーーははははっ≫


殺樹は突然高笑いを始めた後、私の方を見る。
その顔には薄らと笑みが零れていて。
不気味で仕方がなかった。


≪これで、平気。
君が出られるよ?≫

「………」

≪カンナに盗られたモンは返して貰わないとねえ?≫


そう言った後、殺樹はまたくすっと笑った。


「で、でも、私の所為でカンナ達は…」


私の言葉に、殺樹の肩がピクリと動いた。
鋭い視線を私に送ると、低い声を発する。


≪あやめの所為?どうして?
悪いのはあの男だろう?≫


――――――…あの男。
私の義父。


それは、そうなんだけど。
でも、逃げたのは…私。