「あやめ!!!」

「………」


上履きを靴に履き替えて、外へと出た時だった。
アタシを待ってたかのような、その声。

しつこい。
しつこい男は嫌われるよ?

なあ。


「……草野」


アタシは振り返ると、草野を睨みつける。
同じ様にアタシを睨みつける草野。

その睨みを見ても、アタシが全く怯む事はない。
だって、草野の方がどちらかと言えば恐怖に侵されてる様に見える。


「カンナ…、だよな?
あやめを返せ」


今朝と全く変わらない内容。
返せ、じゃないだろうが。
あやめはお前の所為で籠ったのに。

お前の所為で、何もかもを思い出したのに。


「じゃあさ、草野」

「何だ」

「返したらどうすんの?」

「は?」

「あやめが返って来たらどうすんの?」

「………」


アタシの問いに、草野は黙りこむ。
ホラ、結局何も考えてないんじゃない。

それで、返せだなんてよく言えるよ。


「じゃあ、聞いてみる?
あやめに戻って来たいのか」

「…出来る、のか?」

「ああ、してやる」


そして。
あやめに拒絶されて、自分のしでかした本当の罪を確認するんだな。