「草野、良いモン見せてやるよ」
あー。
草野は本当に面白い。
どこまでもクズだ。
人間の底辺の見本だね。
そんな草野にご褒美だ。
「アタシはカンナ」
アタシは昴に呼び掛けると、ふっと力を抜く。
意識を昴とすり替える。
「………俺は、昴」
「…え?」
さっきとは全く違う表情、口振り、声にきっと草野は戸惑っているのだろう。
また、ユウナに呼び掛け、力を抜く。
意識をユウナとすり替えた。
「私はユウナ!心、かっこいねえ、今度私と出かけない?」
「は……?」
次はアン…そう、思ったとこで、昴に制止され仕方なく、またアタシが出た。
目の前で、パニック寸前の草野が瞬きする事なくアタシを射抜くように見つめる。
「わかった?」
ニヤっと笑うと、草野はハッとした。
そして、ぽろっと
「………た、じゅう、人格…?」
そう、言葉を零した。
「せいっ、かーい!!」
アタシは声を弾ませて言った。もちろん満面の笑みで。
「…………し、んじ…」
「信じられない?」
動揺して顔を手で覆うと、まだ放心している。



